――2戦目は、最初から双方ともに仕掛け合う激戦となった。
重心変わった足元狙い、豪毅が剣を横向きに薙ぎ払えば、皓子はそれをフワリと避けて宙に舞う。脚を狙われたからと飛んで避けるは下策の最たるものだが、皓子のそれは下がった豪毅の顎を狙う、蹴りを伴った跳躍だった。顎先を掠めた足の甲をからくも避け、腰を落として身構えた豪毅の前、軽やかに宙を切って着地した皓子は、ただちに石畳を蹴って相手の懐に肉薄する。
サーベルとクレイモアなら僅かに間合いはサーベルの方が短い。それを逆手に取った戦法だった。大剣の常として、懐周りに僅かながら攻撃できぬ間隙ができる。そこを縫うように繰り出される数限りない高速の刺突を、しかし豪毅は剣の柄と柄頭で凌ぎきり、敢えて掴んだ刃を軸に振り払った。
なるほど、勢いつけて叩きつけるか、押すなり引くなりしなければ斬れぬ刃の、しかも根元であれば、掴んでも大過はあるまい。しかし己が武器の特質を知り抜き、またとことんまで扱い慣れていなければ咄嗟に取れぬ手段であった。
間合いを揃えてきた豪毅に不利と悟ったか、あるいは決め手に欠ける攻めを切り換える為か、切り結んだ刃を押し退ける反動で皓子は後ろに距離を取る。と、同時に先まで皓子の歩が刻んでいた足跡に、符が仕込まれていたかの如く藤色の紫電が迸った。地を這い、天上へと遡った稲妻は、鳥籠状に閉じて頭上から豪毅に降り注ぐ。
……岩を裂く大音声は、眩い雷光が交錯した後から来た。誰もが皓子の仕掛けた雷符陣にかかり、ドウと倒れる豪毅の姿を予想した。しかし、土煙が晴れた後に現れたのは、黒焦げになった鉄片と、火花吐くそれを目前にしながら石畳に突き立てた大剣の脇に身を屈める豪毅の姿だった。
恐らくは雷線の鳥籠が閉じる、その瞬間に鉄片を交錯点に放り、大半をそこに集めた上で、なお降り注ぐ稲妻は愛剣を避雷針代わりに避けたのだろう。――それでも幾許かはダメージを被ったのか、焼け焦げ切れた頬や肩の傷を拭いもせず、豪毅は立ち上がって大剣を足元から抜き取った。
【続く】