衝突の瞬間、爆ぜた気炎の破片のように、二人の周囲に激しい火花が散り、細かな紫電が舞った。交錯により削がれた欠片にしか過ぎないそれらですら、石畳の表面を砕き、練兵場の外壁を抉る。打ち合わされる神速の手は、既に守備隊の下級兵レベルの者の眼には追いきれなくなっていた。
斬り、裂き、打ち、砕く。どれ一つとして当たれば無事では済むまい攻撃を、二人は互いに繰り出しつつ捌いてみせる。その様は、恰かも一対の組で舞を踊る者のようだった。巻き上げられた土埃が暗雲を呼び、曇天の低く垂れこめる中、皓子の操る白雷焔が空を灼き、豪毅の放つ金剛炎が宙を焦がす。
振り抜く刃を躱し、身を伏せる傍らに掬い上げた腕で掌底を見舞い、のみならず稲妻の追い撃ちをかける。迫り来る拳を反らした身で避け、すぐに立て直した体勢で気功を放ち、雷撃の軌道をズラすと、そうして抉じ開けた隙に大地を割る程の斬撃を見舞う。凄まじい量の応酬に練兵場は瞬く間に瓦礫の山と化し、舞い上がる粉塵で視界が茫と霞む。もはや互いに視覚に頼る戦闘はしていないと思わせる交錯の果て、争いを制したのは僅かに皓子の一刀だった。
キン、と鳴って宙を舞ったのは、半ばで折れた皓子のサーベル。その瞬間、勝ちを確信して豪毅は手を緩めた。そうして生まれた隙が、一瞬の命取り。一方が戦いを止め、しかし一方が諦めていないのなら、闘争は続いている。
刹那、闘志を失わぬ皓子の瞳が爛と輝き、宙に舞った己が刃を捉えた。それは何かの操り糸に引き寄せられるように後方から豪毅の許に迫り、それと同期して背後に回り込んだ皓子を止める術は、豪毅にはなかった。
【続く】