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2009 *09 28 and you or nothing 〔2〕

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 総司令にたってと望まれ、盟主と彼の雷閃の声がかりを受けて闇の城入りを果たした副官。ただでさえ鳴り物入りの彼は、その美貌をもってまず人目を惹いた。
続き
 次いで噂になったのは、余りにも甚だしい性的モラルの低さ。それは無防備と言っても良い程で。まるで己がそうした対象として他者から意識されていないと捉えているとしか思われぬ有り様だった。
 言うなればそれは、彼自身の審美眼の高さ――己の水準に適った者以外、性的対象として見なさないという――の裏返しであったのだが。そんな事が、この退廃しきった闇の城の中で理解される筈もなかった。また、理知的である筈なのに変な所で子供のように物見高いという本人の資質も災いした。
 闇の城――特に下士官から最下層に屯す雑兵クラスのゴロつき共の間では、件の副官は良い餌食であった。性的欲求を満たすという意味での。
 ある時は下士官用の食堂で、ある時は最下層の薄暗がりで、またある時は兵舎の仮眠室で――という具合に、副官が襲われた回数は限りなく相手した人数は更に不明といった惨状であった。
 本人は、そんな事があっても、さして気にせずケロリとしていたのだが。妻となった総司令の悲嘆は限りなく、また流石に盟主も城の望ましからぬ風紀の乱れを憂慮した。その乱行――と呼ぶも烏滸がましい悪習が止んだのは、ある事件が起こってからであった。

【続く】

14:57 | SS | 稲葉