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2009 *05 16 トキメキ 〔16〕

 雪麟が雷麒の後に追い付いた時、そこは既に戦場と化していた。
続き
 雷麒は、その名が示す通り雷を得意とし、竜身を持つ先代死神を父に、法術においては右に出る者のない当代死神を母に生まれた奇縁の仔である。青龍たる逆とは、ある意味で最も属性が近く、まともに相対するならやりにくい相手だ。
 しかし、所詮は未だ父と仔。加えて雷麒は既に四海を股に掛け、麒麟の務めを果たしている猛者だ。里に箱入りの息子とは経験値が違う。力量の差は歴然。逆も生命の危機に幼態を脱し、成竜に近く昇華して応戦するが、それでも状況は一方的な私刑と変わらなかった。
 稲妻閃き、雷声轟く度に上がるは、憐れな仔竜の悲鳴と血飛沫、そして鱗を纏った肉片の数々。それを最早、麒麟ではなく人身に戻った姿で行う夫・雷麒を見て、妻・雪麟は自らも獣態を解き、人の姿で涙ながらに縋りついた。
「あんまりです! あんまりです、雷麒!」
 嗚咽に喉を詰まらせ、白く細い腕を震わせながら縋りついてきた雪麟を、揺るぎなく抱きとめ、雷麒は低く笑って彼女の額に接吻けた。
「心配しなくとも、じき済む……」
 帰還の挨拶は、その後ゆっくりな、と嘯く夫に、雪麟はイヤイヤと駄々っ子のように頭を振る。そんな彼女の様を、心なし困った風に見下ろした雷麒は、年下の妹でもある雪麟の着物に手を掛け、その前袷を勢い良く引き裂いた。
「なら、この場で今、俺に抱かれるか?」
 問いかけは既に、その形と意味を成していなかった。
「――ぃや…っ!」
 否を叫び、晒け出された胸元を隠すゆとりもなかった。着物の裂け目から差し入れた手で乳房を鷲掴まれ、荒々しく揉みしだかれる。恥ずかしいと思っても抗うことすらできず、反対に四肢から抜けていく力に、雪麟は口惜しさを怺え唇を噛み締めた。
 我が子を嬲り、雷光と共に朱に染めながら雷麒は、雪麟の膝を割り、その細腰を自らの下腹に抱えあげる。屹立したモノの真上に下ろされ、そのまま容赦なく濡れた秘部を貫かれても、雪麟は悲鳴にも似た喜悦の声を上げただけ。縋りつく腕は遂に雷麒を突き放さず、彼の肩に強くしがみつくばかりだった。
 ――抗う筈がない。抗える筈がない。夫に真から求められれば身体を開き、その愛撫に応えずにはいられない。そうなるように他でもない、彼自身が育てたのだから。愛する妹を。誰より恋しい妻を。
「その身体で、この怒りを鎮めてくれ――雪麟、…」
 哀切な響きすら秘めた夫の囁きに、もはや雪麟は言われるまま頷くしかできなかった。

【続く】

21:19 | SS | 稲葉