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2009 *06 04 トキメキ 〔35〕

「俺のこと、許してくれるか?」
続き
 念押しに問うた言葉に答えたのは、スルリ、と項に絡んだ人型の腕。見れば顎人の懐の中、一成は白柴の獣態を解いて人型に戻り、金髪碧眼に象牙色の肌という見事な裸体を晒して漆黒の虎皮にしなだれかかっていた。
 若干毛足の長い黒虎の皮に見え隠れするのは、並みの男なら生唾を呑み込みそうなほどバランスの整った女体。女のものにしては引き締まった尻から腰にかけてのラインも、肉感を残しながら括れた胴も、肋骨が微か透けて見えるほどせりあがった胸郭にたっぷりと乗った乳房も。否応なく男の劣情を誘う。
 虎の姿では隠しようもなく力を得た股間のモノを、開き直って晒け出したまま、込み上げる欲情を噛み殺して顎人は唸った。
「このまま続きシテも、良いか?」
 その声に応えたのは、薄く開いた紅い唇と、そこから覗いた濡れた舌だった。
「……シて。このまま、――…」
 吸って、とねだるように伸び上がり、差し出された乳房の先で真っ赤に充血した乳首が震えていた。それを見た瞬間、顎人の中にかろうじて残っていた、か細い理性の緒は切れた。白く浮き上がる鎖骨のラインから首筋にかけての柔肌に、虎姿のままむしゃぶりつく牙を立てたのが、正気の切れ端に焼きついた最後の記憶だった。

【続く】

13:47 | SS | 稲葉