「ほら、顔を上げて」
せっかくの衣装が着付けられないじゃないと叱咤され、秘女は慌てて顔を上げた。
――そう、もう大祭当日。いつの間に「そんなこと」になっていたのだと思うが、秘女は内宮女官司として盛装し、儀式に列席する運びとなっていた。落ち込んだ日々を過ごすうち、いつの間にかそんな話になっていた。
衣装の手回しの良さといい、皓子が打ち合わせの後に話を持って来た時からそういうことにはなっていたのだろうが。それにしたって一言、教えてくれても良かったろうに。知らなかったお陰で今日の顔色は最悪、お肌のコンディションは絶不調とあっては、自然、秘女の首も俯こうというものである。
かくなる上は、同じ盛装で出てくるであろう皓子の姿が見られるのを心の慰めに頑張ろうと、決意を固めたところで支度を終えた秘女は、祭場たる大広間へ出るよう促された。
「いってらっしゃい。――がんばってね」
「??? がんばります。」
そう、意味ありげに送られた励ましの言葉に首を傾げながら。
【続く】