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2009 *08 11 jealousy 〔11〕

 1週間といえば、ちょうど秘女が皓子の姿を見かけなかった期間だ。彼女のことだから恐らく、日常業務をこなした後の空き時間を充てていたのだろう。――それにしても、
続き
「奪い取ったって、何をしたの?」
 おそるおそる尋ねた秘女に、皓子は造作もなく答え、垂れてきた前髪を後ろに掻きやった。
「百人斬り。」
「ひゃくにんぎり~!?」
「いかがわしい意味じゃないわよ」
 案の定、そちらの方向に発想が向いていたのか赤くなった秘女に、さっくり釘を刺して皓子は寝台の隅に腰を掛けた。
「ただ話をして譲って貰っても意味はないでしょう? だから、訓練場に通って守備隊全員と手合わせしたのよ」
 淡々と述べる皓子の口調に誤魔化されそうになるが、それはとんでもないことだ。……いかに皓子が雷閃の指導を受けた愛弟子だとは言え、実戦に立つ守備隊の面々とは経験値が違う。かといって手加減されたわけでもないだろう。そうであるなら今頃、皓子はこんな姿ではいない。しかも守備隊創設の発起人であり、現隊長の豪毅まで打ち負かしたのだとすれば、その実力は疑うべくもない。
 皓子が上着を脱ぎ捨てた時、道理で彼が目を剥いていたわけだと納得して、秘女は膝のスカートを握りしめた。
「じ、じゃあ、どうして? どうして、あんなことしたの?」
 それは、聞きたいような聞きたくないような、けれど訊かずにはおれないような、秘女にとって最大の謎だった。

【続く】

19:07 | SS | 稲葉