その問いを受けた皓子は、少し困った風な苦笑を浮かべた後、
「――知りたい?」
と、問い返しつつ、身を捩ってベッドの上に乗り上げた。そうなると自然、圧される形になる秘女は、後ずさって皓子のための余地を空けながら、コクリと頷く。
シャツの襟元に指をかけ、胸までボタンを外そうとしている皓子の姿は、正しく捕らえた獲物に襲いかからんとしている肉食獣のそれなのだが、いかんせん「彼」が「彼女」である認識の方が強いのか、秘女に警戒する素振りは希薄だ。それでも仄か頬が薄く染まっているのは、「彼」から発散する風情を色気と感じとり、意識しているからだろう。
「知り…たい、……」
ベッド端まで追い詰められ、ようよう白状した秘女の頬に、皓子はそっと手を当てて囁いた。
「――貴女が、好きだからよ」
貴女を愛しているから。そう、繰り返して囁かれた科白に、秘女は今度こそボンッと音がしそうな程の勢いで火を噴いた。
「えっ、えっ? でも、でも!」
――だったらどうして私が好きな人がいるって言った時、あんな素っ気ない態度だったの? 真っ赤になった両頬を、皓子の白い手に包まれながらも秘女は、懸命に口を動かして問いかける。それは恰かも、今にも食べられようとする小動物が、必死に注意を逸らして虎口を免れようとしている姿にも似ていた。けれど、
「上手くいけば良いわね、なんて…どうして?」
そう尋ねられて皓子は、諦めたように溜息を吐いた。
【続く】