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2009 *09 04 彼氏彼女の事情〔4〕

「……次。」
 ――始まった、所謂『道場破り』は、惨憺たる有り様だった。
続き
 二等兵、上等兵は言うに及ばず、曹兵、尉官クラスに至るまで、手もなく皓子が一刀の下に斬り伏せられる。瞬く間に頭数は三分の一、いや、五分の一まで激減した。
 また皓子も皓子で手加減というものを習っていないのだろう。己より遥かに格下の相手でも容赦なく打ち据える。そんなでは体力が保つまいと思われるのだが、最小限の力で最大効率の攻撃を行うよう仕込まれているのだろう。3日かけ、五十人を勝ち抜いた処では顔色ひとつ変えていなかった。しかも、通常業務の合間を縫った片手間に、である。
 累々と積み重なっていく屍を横目に、豪毅は部下たちを情けないと思うより、皓子に対して感じる「コイツは化け物か」との想いを新たにしていた。
 その手がいよいよ滞り始めたのは、守備隊十桀に入りだした頃である。ほぼ年の差も無に等しい兄弟姉妹と、元からあった警備隊の人員を凌いで上に立っている十人である。いずれも腕に覚えあり、かつてのような大規模戦はないとは言え、散発する小競り合いでは第一線に立って来た連中だ。
 が、しかし、それでも皓子を捉えるまでには至らないのが口惜しいばかりであった。

【続く】

14:29 | SS | 稲葉