log

2009 *09 05 彼氏彼女の事情〔5〕

 修行帰りの理央(りお)、泰斗(たいと)を下し、守備隊きっての問題コンビ・壱意(いちい)、仁皇(におう)を倒せば、残るは大将首・豪毅と副官の魁(かい)、達帰のみとなる。
続き
 六日目の夕刻、持ち前の機動力を活かして善戦した達帰が敗れ、意地を見せた魁が苦杯を舐めた後、百人抜き最終日、豪毅のみを残して早朝から、三本勝負の特別ルールで仕切り直しとなったのは、考えてみれば当然の結果と言えた。
 翌日は、誂え向きの快晴。皓子は外宮女官司としての仕事を休み、豪毅もまた守備隊長位を一時、男ツクヨミ・由良に返上しての対峙であった。……それは紛れもなく、隊長位を懸けての仕合いであると示したものに他ならない。
 元より隊長位に未練のある男が豪毅でもない。あくまで彼は、自らの望み――己が生まれ育った宮と、親兄弟を守りたいという、その一念から刃を取った男である。彼が自ら隊長職を務めるのは、その方が先陣を切るのに何かと都合が良いことと、守備隊結成を起案した者のけじめだと考えているからだ。それ以外、特に執着も拘りもない。
 だが、だからといって生半可な力量の相手に、おいそれと明け渡してしまっていい務めでもない。逆に言えば、そうして守ってきたものすべてを賭けても見たい、と思わせるものが皓子の中にあったのだ。同時に、そんな情熱が己の中に眠っていたことにも、今更ながら豪毅は驚いていた。

【続く】

14:46 | SS | 稲葉