「ほら、顔を上げて」
せっかくの衣装が着付けられないじゃないと叱咤され、秘女は慌てて顔を上げた。
――そう、もう大祭当日。
「ほら、顔を上げて」
せっかくの衣装が着付けられないじゃないと叱咤され、秘女は慌てて顔を上げた。
――そう、もう大祭当日。
……女官室を飛び出した後の秘女は、惨憺たる有り様であった。まず、掃除中のバケツにハマる。イタズラな子供たちの投げる泥団子には当たる(普段は華麗に避け、逆襲まで果たすにも関わらず)。
しまいには、
「な、な、な、なにっっ!?」
驚き過ぎというほど仰け反った秘女に、皓子は呆れた溜息をひとつ。
「何って、眼に睫毛でも入ったかと思ったのよ」