秘女が引き抜いた得物は――猫じゃらし。
「うわ~んっ! 違う違う~っ!」
「ここから先は、通さない!」
まだ幼さの残る声で言い切った秘女に、正体の露見した賊は小馬鹿にした表情で顎をしゃくった。明らかに「小娘ひとりに何が出来る」といった風情である。その侮りが、秘女にとっては絶好の機先であった。
「てぇ~い!」
若葉ノ間で、秘女は絶体絶命のピンチに陥っていた。真っ先に事態に気がついたのが彼女であり、また対応できた唯一であったからだが、それにしては取った手段が不味かった。
――事の起こりは今より少し前。
「今までと同じ事をして、お給金が入るのなら儲けものでしょう?」
そんな皓子の口振りに、秘女はますます頬を膨らせ従姉の手を押し返す。
「そういう問題じゃないのー! ……そういう問題じゃ、ないんだから。」