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2009 *09 22 all or nothing 〔3〕

 甲高い仔犬の鳴き声が回廊に響き渡る。それに溜飲を下げたが如く、身に負った傷の半ば以上を治癒させた黒鏖は、冷淡な眼差しで石の壁に凭れ掛かる仔犬の姿を見据える。
 だが、彼が久鷹に注意を払ったのは、そこまで。

16:18 | SS | 稲葉

2009 *09 21 all or nothing 〔2〕

 黒金の鱗さざめかせ、翼ある蛇が眼を覚ましたのは、仔犬が彼を引き摺り始めてから、暫く経った後のことだった。
 黒き蛇――父親と同じ異名を、いずれ冠するようになるであろう彼の名は、

16:17 | SS | 稲葉

2009 *09 20 all or nothing 〔1〕

 ――初めて愛した女は母だった。
 その胎の中から生まれ出たくないと思う程に

09:58 | SS | 稲葉

2009 *09 19 彼氏彼女の事情〔19〕

 どうと倒れた豪毅の身体を、その後、如何にして部下たちが医務室へ運んだのか、豪毅は聞かされていない。ただ彼が倒れた直後に皓子もまた、気を失って卒倒したのだと聞かされ、少なからずホッとしたのは偽らざる真実だった。
 そして今日

08:32 | SS | 稲葉

2009 *09 18 彼氏彼女の事情〔18〕

「――そこまで。」
「……ッ、…」

08:29 | SS | 稲葉