甲高い仔犬の鳴き声が回廊に響き渡る。それに溜飲を下げたが如く、身に負った傷の半ば以上を治癒させた黒鏖は、冷淡な眼差しで石の壁に凭れ掛かる仔犬の姿を見据える。
だが、彼が久鷹に注意を払ったのは、そこまで。
甲高い仔犬の鳴き声が回廊に響き渡る。それに溜飲を下げたが如く、身に負った傷の半ば以上を治癒させた黒鏖は、冷淡な眼差しで石の壁に凭れ掛かる仔犬の姿を見据える。
だが、彼が久鷹に注意を払ったのは、そこまで。
黒金の鱗さざめかせ、翼ある蛇が眼を覚ましたのは、仔犬が彼を引き摺り始めてから、暫く経った後のことだった。
黒き蛇――父親と同じ異名を、いずれ冠するようになるであろう彼の名は、
どうと倒れた豪毅の身体を、その後、如何にして部下たちが医務室へ運んだのか、豪毅は聞かされていない。ただ彼が倒れた直後に皓子もまた、気を失って卒倒したのだと聞かされ、少なからずホッとしたのは偽らざる真実だった。
そして今日