危惧していた仕掛けは、すぐに発動した。豪毅の周りに纏わりつく光球を焦点に、彼が踏む足下の石畳を剥がす勢いで銀竹が突き出して来る。たちまち脆くなる足下にも、しかし歩みを掬われることなく豪毅は、皓子の跳ねるすぐ後を駆け抜けて行った。
目標を捉え損ねた銀竹は、光球に当たると同時に粉々に砕けて無数の氷片となる。それが細かな氷の小刃となって我が身を取り巻くのを見越して、豪毅は自らも左手の剣指を起こし、熱波を喚んで鋭い切片を溶かし尽くした。
水滴と化した氷片は、しかしそれで蒸発することも下に落ちることもなく宙に留まり、流れる水の細縄となって豪毅の四肢に絡みついた。さしもの豪毅も、この変容にまでは対処が追いつかなかったのか、絡め取られた水の縄に、四肢を強張らせて抵抗する。
ようやく足を止めた豪毅の許に、距離を開けた皓子に代わり、しつこく纏わりついていた光球が集って飛来し、方々から散々に彼の身を貫こうとする。が、――。
「――ッオォォッ!」
咆哮一声、金色の獅子姿に転変した豪毅は、揺する身のひと振るいで絡みつく水縄を引き千切り、ついで喉から放った気功砲により、光球をすべて纏めて相殺した。
【続く】