頬の火照りも引かぬ間に、自分たちの私室まで連れ帰られた秘女は、皓子の腕から寝台にそっと下ろされ、弾かれたように顔を上げた。そこに立つ皓子はいまだ男性体であり、白い絹シャツの下には厚い胸板すら透けて見えることに気がついて、カッと眦を赤らめる。あの胸に身体を預け、顔さえ埋めていたのかと想えば、今更ながらに肌を刺す恥ずかしさが鼓動に熱を与えたからだ。
真っ赤になったきり口もきけずに強ばっている秘女を見つめ、皓子はそっと微笑みながら彼女の頬に手を差し伸べた。
「あぁ、やっぱり良く似合う――…」
それが女官司の盛装を指すのだと知って、ますます秘女はいたたまれなさに唇を噛む。今日だとて、こんなに着飾っていなければ、あんな場所でみっともなく転ぶことはなかったのだ。それを似合っているなどと言われたところで、額面通りに受けとめられるわけもない。恥ずかしさから話題を逸らそうと視線を泳がせた秘女は、ふと気がついたことを口に上らせた。
「あっ、あの衣装! あの軍服は、どうしたの?」
明らかに躱したと解る話題の転換に、皓子は面白くもない双眸を眇め、淡々と呟いた。
「奪い取ったのよ」
「奪い取った!?」
すっとんきょうな声を上げる秘女に、皓子は何でもないことのように嘯いた。
「使用権をね。1週間かけて」
「1週間!?」
またしても飛んだ悲鳴に、皓子は眉ひとつ顰めず頷いた。
【続く】