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2009 *06 23 白き焔 〔10〕

「貴女、宮を汚すと思って手加減したわね?」
 この程度の相手に遅れを取るなんて、と言外に責める皓子の言葉に、秘女は涙を溢しながら唇を噛み締めた。だって…、と言い訳する科白は安堵の嗚咽で声にならなかった。
 皓子が来てくれた、皓子が来てくれた。しかも自分の想いを誤たず汲み取ってくれた。その喜びで胸がいっぱいになり、とても言葉など紡げなくなってしまったのだ。代わりに、……。
「皓子、皓子、皓子、皓子…っ」

22:46 | SS | 稲葉