…肌の色と眸の色しか塗れてませんι
と、その時、内殿に続く回廊を、足音もなく歩み来る気配が立った。後に曳く影の形は闇に溶け、限りなく人外に見える男の名は、騰蛇。藤神祐子が従える、もうひとつの式神にして愛人であった。
「主、……」
「おーおー、若いっていいねー」
などと宣いつつ、己も同じ程度には若いだろうという外見をした彼の名は藤神真人。少し癖のある跳ねっ毛を後ろで束ね、隆たる筋肉を惜しげもなく曝す忍者風装束で欄干に座す彼は、こう見えてアマテラス直属の護衛、兼、暗殺者だ。
そも暗殺という陰湿な遣り口を好まない