「皓子ー!」
呼ぶ声に、回廊の途中、皓子(こうし)と呼ばれた影は立ち止まった。藤色がかった白い髪を、高位の女官に定められた形に結い、ゆったりとした衣の裾を払いつつ振り返る姿は、行儀作法の手本そのもの。しかし、その面に浮かべられていた無表情が、ふわりと緩むのを見れば、彼女の態度が生まれ持ったものではなく、自らの努力によって身につけられたものだと知れる。
「……秘女。もう子供ではないのだから」
「皓子ー!」
呼ぶ声に、回廊の途中、皓子(こうし)と呼ばれた影は立ち止まった。藤色がかった白い髪を、高位の女官に定められた形に結い、ゆったりとした衣の裾を払いつつ振り返る姿は、行儀作法の手本そのもの。しかし、その面に浮かべられていた無表情が、ふわりと緩むのを見れば、彼女の態度が生まれ持ったものではなく、自らの努力によって身につけられたものだと知れる。
「……秘女。もう子供ではないのだから」