雷閃の姿が白い光に落ちる影の中、朦朧と霞み始める。来た時は確かに両足を使っていたにも関わらず、その様な移動の手段を見せたということは、彼が月の宮の地下ではなく異なる空間に跳ぼうとしている証だった。
ゆらゆらと、水面に映る月影の如く
雷閃の姿が白い光に落ちる影の中、朦朧と霞み始める。来た時は確かに両足を使っていたにも関わらず、その様な移動の手段を見せたということは、彼が月の宮の地下ではなく異なる空間に跳ぼうとしている証だった。
ゆらゆらと、水面に映る月影の如く
喉も裂けよとばかりに吐き出される咆哮。それは黒鏖に宛てたものではなく、雷閃に向けられたものだった。未だ雷槌を放ち続ける掌の前、怯じることなく飛び出した久鷹は、まだ稚い四肢を懸命に突っ張り、黒鏖を背に立ちはだかって雷閃と対峙する。
眼を瞠り、歯を剥き唸る、その姿は
甲高い仔犬の鳴き声が回廊に響き渡る。それに溜飲を下げたが如く、身に負った傷の半ば以上を治癒させた黒鏖は、冷淡な眼差しで石の壁に凭れ掛かる仔犬の姿を見据える。
だが、彼が久鷹に注意を払ったのは、そこまで。
黒金の鱗さざめかせ、翼ある蛇が眼を覚ましたのは、仔犬が彼を引き摺り始めてから、暫く経った後のことだった。
黒き蛇――父親と同じ異名を、いずれ冠するようになるであろう彼の名は、